金剛力士像修復続報

9月11日付けで第一報をお知らせした、関東地方某寺院の金剛力士像修復の続報です。

某寺とは、茨城県桜川市の古刹・雨引山楽法寺のこと。ご住職のご許可を頂き、お名前を明らかにいたします。吽形像の解体と修復作業に続いて、現在、阿形像の解体を始めています。
その胎内から、永正16年(1519)の「再興」を記した銘札が発見されました。銘文中に「文明第四壬申(1472)暮春 都鄙兵乱」の文言があり、「応仁の乱(1467〜1477)」を含む全国的な争乱である「享徳の乱(1455〜1483)」という足利将軍家(都)と鎌倉公方足利成氏(鄙)との一連の戦乱によって当寺が炎上したものが、1519年に再興したという記録です。
したがって、この仁王像はやはりそれより以前の造立であることがわかります。銘文は、これから詳細な解読を進めていきます。

阿形像は現在、表面の厚い後補材を除去しているところですが、一木割矧ぎという古風な構造や造形の特徴から、慶派初期の仏師の手になるものと思われます。こうした先人の記録を目のあたりにすることによって、歴史を実感できることが仏像修復の醍醐味です。また新たなことがわかりましたら、追ってご報告します。