『近代彫刻の天才 佐藤玄々〈朝山〉』展が、10月27日〜12月16日まで福島県立美術館で開催中です。

1888年福島県相馬郡に生まれた佐藤玄々(朝山)は、山崎朝雲に弟子入りし、早熟の天才的彫刻家として高い評価を得ました。そしてパリのブルデルのアトリエで西洋彫刻を学び、帰国後は日本の木彫と西欧の近代彫刻を融合させた巨匠として活躍しました。彼の代表作としては、皇居前の和気清麻呂像と三越日本橋本店の「天女像(まごころ)」があります。しかし、馬込のアトリエにあった初期の代表作を空襲で焼失したことや、強烈なキャラクターに対する毀誉褒貶などが原因となって、戦後の美術シーンからは忘れられた存在になっていました。

今回は福島県で初めての大回顧展となります。会場では、東京藝大文化財保存学特任准教授・山田修氏による三越「天女像」の3D映像を横10m、縦5mの大壁面に投射して、彼の代表作を余すところなく見ることができます。また同じく藤曲隆哉講師による和気清麻呂像試作のX線画像の解析によって、制作過程の改変を見ることができます。

頭でっかちで美しさを喪失した現代美術にはない芸術が本来持っている豊穣な装飾美を再認識することができます。明治から昭和に掛けて生きた天才彫刻家の軌跡を、ぜひこの機会にご覧下さい。