〜ある報道関係者からの手紙への返事〜


 私の許に、取材にきたある報道関係者から、お手紙を頂きました。

 そのなかには、個人的には奈良のマスコットキャラクターに好感を抱いていることや、私の工房で実際に作品に触れて感じた思いが、放映された番組にまったく反映されなかったというお詫びの気持ちが綴られていました。

 その方への私の返事を掲示します。個人や団体を特定する箇所は○○で表記しています。

 みなさんのご意見をお聞かせ頂けましたら幸いです。

  2008.3.11  

籔内佐斗司  

 


○○さま

 

 お手紙を拝見しました。

 私自身は、ニュース素材を取材されたにすぎないあなたに対して、特別な感情はありませんから、ご安心ください。

 ただ、私のウエブに掲示している総括的回答にも書いておりますが、今回の騒ぎが、芸術表現の問題を超えた、社会的問題であるという思いは、ますますつよくなっています。


 今回のことで私が一番感じたことは、現実社会が実体のわからないネット社会とどうつき合うかということです。

 今度の騒ぎの渦の中で、現状のネット社会は、仮想現実にすぎないことがよくわかりました。ひとつのサークルが50人なのか10000人なのかもわかりませんし、ネットアンケートなども、発信者を特定できるわけでもありませんし、大量クリックの分析などもどのように行われているのでしょう。意見の数やアンケート結果に出てくるのは客観性を装った虚ろな数字だけです。

 そうしたなかに現れた「仮想現実」を、マスコミが責任を持って精査することなく現実社会に持ち込んでしまったことがもっとも怖いことだと思います。


  私のウエブサイトでは、地域別ヒット数のリサーチを続けてきましたが、この騒ぎ以降、奈良県は一度も10位以内になったことはありません。一時間に数千件といういちばん賑やかだった日でさえ宮城県の次でした。人口比偏差を考えても、この件に関して奈良の関心は低いように感じます。しかし、この数字(データ)ですら、なんの判断の根拠(インテリジェンス)にもなりません。

 今回の件を、こうした観点から取り上げたマスコミが皆無であったことの方が、よほど大きな社会問題だと思います。ある種の目的をもった団体や海外の謀略機関に対して、この国はとてつもなく脆いと思います。

 私は平城遷都1300年祭が、数ある自治体イベントのような、いささか幼稚すぎるアミューズメントパークの催しのようになって欲しくありません。

 八宗兼学の学問寺の都として、またとても寛容で融和的なわが国の神仏習合の発祥の地として、そして日本人の精神世界の源にふさわしい知性的な催しとなって、 1300年の歴史を見つめつつ、今の日本、これからの世代に遺していくべきこの国の在り方を考える催しであってほしいと心から願っています。

 奈良の地域振興だけの刹那的なお祭りなら、それこそ税金の無駄遣いだと思います。

 あの子のコンセプトは、あらゆる存在と事象の背後に潜むエネルギーの源なわけですから、これからどんな風にも変化(へんげ)して、平城遷都1300年祭を盛り上げてくれることでしょう。また彼のなかまが全国に散らばっていますので、きっと各地から力強く応援してくれることと思います。

 今まで、こういう性格を持ったマスコットキャラクターは、どこにもいなかったと思いますので、選考された方がそのあたりの可能性に着目されたとしたら、慧眼だったと思います。

 私の意見が、あなたの上部組織にすこしでも届いて、○○の報道の在り方を振り返って頂けることを、願っています。

 あの子は、すでに私の手を離れて、ネット社会で元気に歩き始めているようです。どこかで見かけられましたら、「元気か?」と声をかけてください。

 

籔内佐斗司  


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