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籔内佐斗司寄稿
「新造・菩提僊那像に思う」
新造・菩提僊那像に思う

籔内佐斗司/彫刻家

 開眼導師・菩提僊那のご尊像を、新進の彫刻家・上原三千代さんと日本画家・篠崎悠美子さんが協力して制作されました。東大寺さまが新造された彫刻像としては、およそ300年ぶりのことと聞いており、おふたりに縁浅からぬ身として、この快挙をわがことのように喜んでいます。
 おふたりは、東京芸術大学大学院において文化財の保存修復技術を専攻した同窓です。そこでは古美術の模写・模刻という地味ながらたいへん意義深い技術を修得されました。とりわけ上原さんは、1994年に大学院を修了する際に制作した国宝「重源上人像」のみごとな模刻像を東大寺に寄進されています。私の作業場の片隅で、必死の形相で重源さまと格闘していた彼女を懐かしく思い出します。
 そして芸大を了えたあと、おふたりには私の工房の中核スタッフとして作品制作を大いに助けて頂きました。近年は、今までに培った技術と感性を活かし、それぞれの分野の気鋭の作家として眼を見張る活躍をしています。

 東大寺さまがこの重源さまの模刻像の評価を踏まえ、菩提僊那像の制作を伸び盛りの彼女たちに委ねられたことは、まことにご英断であったと存じます。
制作にあたっては山崎隆之先生はじめ先輩諸兄にアドバイスを頂き、また私の工房で永くお手伝いを頂いている名工・三浦康道氏の技術的なお力添えもあったようです。みなさんのご好意と合力に支えられて、おふたりが制作を滞りなく成就されたことを、こころから嬉しく思っています。
 そして本年、奈良国立博物館で開かれた「東大寺のすべて」展にこのご尊像が歴代の寺宝とともに展示されたのと時を同じくして、私も奉納展覧会「籔内佐斗司 in 東大寺〜太陽と華と〜」を金鐘会館で開催し、大仏開眼1250年を一緒にお祝いさせて頂けましたことは、大仏さまのご縁の賜物と深く感謝しています。

 私たち絵画や彫刻、工芸などに携わる者は、常に制作依頼者によって育てられてきたことは歴史をみれば明らかです。ことに東大寺さまは、1250年間のさまざまな節目に、新しい才能が生まれる機会を与えてこられました。
平成十四年、菩提僊那像を造り出したご両人も、輝かしい先達の末席に加えられた誇りと感謝を忘れず、創作の分野でもますます精進されることを期待しています。
(2002.8.13)

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