一本ごとの電信柱は、それなりに美しいものです。頭に金属の帽子をかぶりいくつも変圧器をきりりとしめて、工事会社の誠実な職人ワザを見る思いがいたします。そして今もかわらず、迷いネコやサラ金・不動産関係などの掲示場として機能しています。
いまの電信柱はビラよけの工夫がいろいろされていて、ぶつぶつのついたプラスチックの腹巻きをしています。そのためかシルク印刷をした布を木枠に貼ったものや厚紙に針金を通した「ステ看」といわれる取り付け式が中心になっています。 あやしげな広告媒体は、すでに電柱から分岐した公衆電話ボックスに移っています。
可愛い女の子の写真と電話番号が印刷された色とりどりの小さなシールが壁一面に貼りめぐらされた電話ボックスは、自称アーティストの「ゲージツ作品」よりはよほどパワフルで美しい。もっとも最近の携帯電話の急速な普及によって、不法芸術の発表の場としての電話ボックスの利用は早晩すたれていくことでしょう。こうしてみると、電信柱やその端末は、最先端の通信手段であるとともに、常にもっとも素朴な情報媒体でもあったようです。そういえばわが家の駄犬も電信柱の根元を仲間との情報交換の場に利用しているふしがあります。 |