藝大の大学院のなかに保存修復技術研究室という古文化財の修復を研究するコースがありました。国宝の修理を一手に行っている京都の?美術院とも強くつながっていましたので、手を動かしながら食べていけそうに思えて、あまり深く考えもしないでこの研究室に入り直しました。
ところが、教官人事のごたごたから、なんと研究室そのものが崩壊してしまったのです。幸か不幸か、そのあとを暫定的に引き継がれた平山郁夫先生のご指示で助手に採用され、研究室の運営をお手伝いすることになりました。その後、6年間の在職中に経験した大学研究室経営のイロハから仏像修復の実際まで、じつに実りの多いものでした。とくに修復をすることで平安時代や鎌倉時代の仏像がどのように作られていたかをつぶさに研究することができました。ですから私の彫刻技法は、ほとけさまから直接教えていただいたともいえます。
作家として独り立ちしてから、陶芸や漆芸、また歌舞伎や邦楽などいわゆる伝統工芸や伝統芸能の分野のかたたちとご一緒する機会が多くなり、仕事場をお訪ねしたり、代々つづくお仕事を見せていただいたりするたび、自分の生まれ育った環境と引き比べ恵まれた環境に、ためいきがでることもしばしばでした。
最近は、京都のお茶の職方のみなさんとのおつきあいも多くなり、いままで私が知っていた世界とはまったく違った作家のありようにとても興味を覚えています。
私の仕事場には、常に数人のスタッフが私の仕事を助けてくれています。 |