そんな私がパソコンを購入したのは三年前のことでした。コンピューターに詳しい古い友人が経営している事務所を訪れたとき、ずらりと並んだパソコンのデイスプレイを見て「かっこいいな」と思い、「ひともすなるパソコンをわれもしてみんとてはじめるなり」、購入の動機はその程度でした。
私の希望を聞いて友人が機種を選定してくれました。私がわかるのは値段だけです。判断にこまると「値段の高い方」にしておきました。二週間ほどしてたくさんの機材が運び込まれ、お店のひとが手際よく組み立てていくのを遠くからそっとのぞいていました。機械前面のすっきりした感じやおしゃれなかじりかけのりんごマークとはうらはらに、後側のごちゃごちゃとからまったコードがこの機械の怪しさを象徴しています。
販売店のインストラクターがにこやかにやってきて、いろいろ説明をはじめました。そのうち、私の反応を見て不安になったらしく、「えーと、実際に操作をなさるのはどなたでしょうか。」
まわりを取り巻いていた工房のスタッフはいっせいにあとずさりを始めます。私はファミコンゲームが大好きという一番若い十代のE君を担当者に指名しました。「これだけの環境(機器とソフトがそろっている状態の程度をこういいます。)がそろっていれば、あしたからでも一流のデザイン事務所がはじめられますよ。」というセールスマンの笑顔の奥には「操作できればね。」と書いてありました。
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