近代になって、西洋人がキリスト教的世界観から進化論や唯物論などの科学的世界観へ踏み出し、実存主義者が「神は死んだ」と叫んだとき、神にかわって創造する「artist」という「超人」を作り上げました。その超人が創り出した「もの」を「fine art=純粋芸術」と呼びました。ところが、わが国において、「八百万の神々」や「ほとけさま」は、日本人がどんな世界観を持とうとも、あいかわらず暖かく見守っています。われわれの神仏は苦もなく科学的世界観と共存することができたがために、日本人は人と芸術の関係について真剣に考える必要がありませんでした。わが国の先人は科学技術とともに、ヨーロッパの絵画や彫刻の様式や技法を盛んに輸入しました。しかしそれらは「fine art」に止揚されることなく、用途を持った絵画であり置き物であり続け、つくり手は「芸術家」という名の「職人」であることに安住してきました。 |