私はおもに画廊で作品を発表してきましたので、私の作品を最初に評価をするのはいつも個展を企画した画商さんでした。ですから私は、展覧会は作家と画廊主が一緒に作り上げるものだと思っています。 十数年前、三十過ぎの駆け出しの作家だった私を拾いあげたのがフジヰ画廊の社長であった藤井一雄氏でした。当時の多くの画商さんたちは、新作の木彫などには目も向けなかったころです。私はちょうど父親の世代にあたる藤井さんをびっくりさせることだけを目的に作品を作っていたといっても過言ではありませんでした。また藤井さんは、ニューヨークでの個展、現美展、潮音会、TOKYO ART EXPOなど駆け出しには信じられないような大舞台へ私をつぎつぎと押し出しました。私はそれに恥じないように、そして藤井さんの驚く顔が見たくてしゃにむに作品を作り続けました。あのころの私の個展は、私と藤井さんとのコラボレーションであったと思っています。
私は、自分の作品が美術という範囲にとどまることなく、異なった分野の才能とともに作り上げる総合芸術の一翼を担えるような仕事をしたいと考えています。建築家やまち作りの担当者と一緒に進める「Art for the Public」と名付けた一連の仕事もコラボレーションのひとつです。また十年以上暖めている企画としては、仮面劇があります。脚本家、演出家、音楽家、照明家、俳優、舞踏家、衣装デザイナーなどあらゆる分野のひとたちと作り上げる総合芸術、これには長い時間がかかるでしょうが、いつか必ずスポンサーやプロデューサーなど素晴らしい人組みが自然にできあがるときが来ると信じています。
この秋から、とても意欲的な巡回展が始まります。「籔内佐斗司、“花”と出会う」と題されたこの展覧会は、東京、名古屋、大阪、福岡の四つの画廊が私の作品を三人の花を扱うアーティストに提供し、思う存分料理をしてもらおうというものです。素晴らしい「花」のアーティストたちと私の作品が織り成すコラボレーションは、必見の価値ありとお薦めいたします。
このホームページ内に掲載した全ての文章、
画像は著作権者の許可無しに使用することを固く禁じます。
YABUUCHI Satoshi's Public Relations Dept.
UWAMUKI PROJECT
All the text and images used on this site is copyrighted and
its unauthorized use is strictly forbidden.