原始キリスト教には、紀元千年から1999年までの千年間を、キリストや聖人たちが再臨し世界を楽土に変えるという「千年至福王国」の思想があり、中世からルネッサンス、大航海時代、地球規模の植民地支配など、キリスト教圏の驚異的な拡大の推進力ともなりました。もっとも非キリスト教圏にとってははた迷惑な思想ではありましたが。
そして1999年は「千年説」が説く神が人類への最後の審判を下す年として、敬虔なキリスト教徒には恐怖の年でもあったわけで、ミケランジェロの壁画やロダンの地獄門のテーマにもなりました。もちろん現代に最後の審判を信じているひとは殆どいなかったでしょうが、西暦2000年は深層心理のなかであらたなる千年王国の始まりとして特別の意味が込められているのです。そして日本でも各種便乗商法やあやしげな新興宗教の信者集めに、最後の審判やハルマゲドンが盛んに使われたことは記憶に新しいことです。またコンピューターの2000年問題も、技術的な危険性だけでなく、西洋人の深層心理からくる数字の魔力によって助長されている面もあるのではないでしょうか。 |