田園地帯のぬかるんだ赤土の道沿いには、バナナの葉っぱで覆われたお世辞にも立派とはいえない家が点在していて、牛や水牛や痩せた犬がどこにでものんびりと歩きまわっています。家の前に掘られた池には、蓮や睡蓮がほんとうに美しい花を咲かせています。
しかしアンコールワットの参道に坐り込んだたくさんの乞食をよく見ると、足や腕がなかったり、顔がゆがんでいたりしています。国民の数よりも多いという地雷による犠牲者であることは明白で、この国の重い現実を知らされました。
また、どの遺跡に行ってもすぐに小さな物売りたちに囲まれてしまいました。日本人と見ると「おにっさん、本買ってよ。写真きれい。10ドル。」「おにっさん、ティーシャツ買ってよ。5ドル。おにっさん!」「しゃしんふいるむ、いらない?」 言葉が得意でない小さなこどもは、ぼろぼろになった扇子で、一生懸命無言で扇いでくれます。彼らのうしろには、原付バイクに跨ったお姉さんが目を光らせていますから、5〜6人のよく訓練されたチームで動いていることがわかります。ガイドに聞くと、家で牛追いをしたり田んぼの手伝いをしているよりは金回りはよくて、けっして悲惨なこどもたちではないとのことでした。たしかに、みんな健康状態もよさそうですし、卑屈で殺伐とした感じがしなかったのにはほっとさせられました。
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