『月刊美術』2000年5月号掲載
籔内佐斗司(彫刻家)
縁(ブロンズ)-蓋置き-
国公立美術館や博物館の法人化の流れのなかで、美術館のありかたが問われています。美術館が「名品」を並べ美術史的知識を学びありがたがるためだけの施設ではなく、美術を生活に反映させるために利用するという提案を積極的に推進すれば、いかようにも発展の道はあるでしょう。また教育現場と連動して生活芸術の体験センターとして脱皮していくのもひとつの選択肢です。 日本の政治家や外交官、ビジネスマンたちの、自国の文化に対する教養のお粗末さは、外国の人からしばしば指摘されることです。それは、公教育における美術教育の貧困が原因です。 現代の日本が世界に誇りとすべきは、近代西洋文明からの借り物である思想でも科学でも、もちろん政治でもなく、いかに美しく日常を生きるかをつきつめた生活芸術、生活美学であり、このことから情操教育全般を捉え直す必要があると思います。