私の友人で翻訳をしている英国人がいます。先般開催された「鑑真和上展」 の図録の英文も彼のしごとでした。「鑑真展」のオープニングレセプションに彼と一緒に出かけた時、文化庁のおしごとをずっとしてこられたW先生にお目にかかりました。私も芸大時代にたくさんのことを教えて頂いた恩師のひとりでもあります。先生は、彼の翻訳について、「あなたは重要文化財の翻訳を『Important Cultural Assets』と翻訳していたけれど、日本では公式な用語として『Important Cultural Properties』を使うことになっています。ですから、翻訳をする時は、『asset』ではなく『property』を使って下さい。」という指摘をされました。
もちろんギャビンは、文化庁が使っている公式の「用語」を使うべきだということはすぐに納得しましたから、先生の指摘を素直に受け入れました。しかし帰り道に「僕は大事なものという意味を込めて『Asset』を使ったんだけどね。」と首をすくめたのです。私は、この「Asset」と「Property」の違いにとても興味を覚えました。
来年五月、東大寺の境内で大きな展覧会の企画が動き始めました。題して「籔内佐斗司 in 東大寺」です。東大寺大仏開眼千二百五十年の大法要に合わせて繰り広げられるさまざまなイベントの一環で行われます。たくさんの人たちがこのプロジェクトに関わります。「もの」である私の作品が並べられたおおきな会場にどんな「たましい」が入って、いかなる「こと」が起きるのか、請うご期待というところです。私の作家としての原点でもある奈良の地の、しかもその中心である東大寺で、大仏さまの千二百五十歳を、思う存分にぎやかにお祝いしたいと思っています。
鹿茸童
このホームページ内に掲載した全ての文章、
画像は著作権者の許可無しに使用することを固く禁じます。
YABUUCHI Satoshi's Public Relations Dept.
UWAMUKI PROJECT
All the text and images used on this site is copyrighted and
its unauthorized use is strictly forbidden.