WELCOME TO THE WORLD OF YABUUCHI Satoshi・sculptor
日本経済新聞の17日夕刊


右側の欄に文章を抜粋してあります。
「至高の一点〜国宝醍醐寺展から〜『弥勒菩薩坐像』より」
弥勒菩薩坐像 快慶作
籔内佐斗司(彫刻家)

 東京国立博物館平成館の彫刻展示室は、天井も高く照明もよく考えられているため、仏像を鑑賞する空間としてはたいへん優れている。しかも、ガラスケースを使わ ない露出展示なので、仏像のパワーを直接吸収できるようだ。この展示室で、醍醐寺 のたくさんの秘仏を一堂に拝観できることはなんと贅沢なことだろう。
平安密教の力強い造形の仏像が林立するなかで、この弥勒菩薩坐像の静かな華麗さはひときわ印象的だ。鎌倉時代の代表的仏師・快慶による傑作である。金泥・截金で仕 上げられた落ち着いた黄金色が、圧倒的な品格を感じさせる。修復の現場で毀れかけた仏像をたくさん見てきた私には、台座から瓔珞や宝冠、光背のてっぺんまで何ひとつ欠けることなく、八百年前に作られたお姿のままで坐っておられることが奇跡のように思えた。お寺でも、この像を直接拝観することはとても難しく、私も間近に見るのは初めての経験だった。快慶の美意識と技倆をここまで完璧な状態で眼にした時、私はことばを失った。少し離れて全体のお姿を仰いだ時、ひとが造ったものとは思えない崇高さに、自然と目頭が熱くなってしまった。

(1192年作、木造、像高112cm、重要文化財)

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