hospital
籔内佐斗司
「hospital」というのは「客をもてなす場所」というラテン語がもとになっているそうですね。
病院は、一部の不運なひとのための特別なところではなく、誰でもいつかは利用しなければならない重要な公共施設です。これからの病院経営は、ホテルや結婚式場などと同じく、サービス業としての自覚と脱皮が重要になってくることは必至です。とくに飽食と肥満の極みにある口うるさい団塊の世代が大量に病院の住人になることを考えると、病院の選別・差別化も厳しくならざるをえません。
患者にとって、病院は非日常空間であり異界です。現状では残念ながら、利用者が必要以上に萎縮し自信を失ってしまう環境になっているように思います。入院患者が、ふつうの人間として快適に過ごせる環境作りが求められてくることでしょう。「病を直す技術的な場所」と「こころ安らかに過ごせる癒しの場所」とが両立してはじめて、「病院」が「hospital」になるように思うのです。
内装や家具を考え、絵や彫刻を飾って、いい器で食事をすること、そして音楽や娯楽設備の充実など患者が病院内で享受できる上質で快適な環境を総合的に考える研究も重要なことです。なんといっても私達ひとりひとりの「終のすみか」になる可能性が大きいのですから。
私の生業は、人のこころに直接働き掛ける「芸術」です。なにか、お手伝いできることはないかといつも考えています。「病院にどのような情操環境が必要か」を考える開かれた組織があったら、ぜひお手伝いをしたいものだと思っています。