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加山又造展より-「黒い薔薇の裸婦」 籔内佐斗司(彫刻家) 日本画家が裸婦を描くようになったのは、案外新しいことである。花鳥風月・四季山水を主題とする日本画は、性的な香りのする主題を永くタブー視してきたからだ。日本画の裸婦像の嚆矢として、一九五九年に故中村正義氏が日展に発表した舞子像があるが、同世代の加山又造氏が裸婦像を銀座の画廊で発表するのはそれから十三年も後のことになる。油絵の裸婦の多くは「いまポーズをとっているの。」とでも言いた気にすましている。その点加山作品を筆頭とする日本画の裸婦像は、なぜか妙にエッチな感じがする。日本画家は、モデルを写生することから最後の本画に至るまでにたくさんの下図や習作を重ねる。そのあいだに、おとこである画家の願いのままに、現実のモデルの「おんな」のエキスが馥郁と醗酵を遂げるからなのだろう。その醗酵の度合いは、作家の技倆のほかに、天性のエロテイシズムと人格に負うことは言うまでもない。加山氏の描いた裸婦たちに会えると思うと心が躍る。 |
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