鞁筒
大倉源次郎/能楽大倉流小鼓方 十六世宗家


小鞁も大鞁も筒の素材は櫻の木から作られます。足利時代に規格化され元禄期には大量生産されるに至ったこれらの鼓筒は、今なお多くの演奏家の手によって能、歌舞伎等の舞台で使用され、日本を代表する打楽器とされています。

 江戸以前の鞁筒は、今の奈良県桜井市多武峯で主に生産され、みずめ櫻、薄墨櫻等の木が使われたと聞いています。また小鼓の皮は様々な動物が試された様ですが子馬の皮が良いとされます。

 日本では食肉のことを、木の「実」であると言い習わす風習が有りました。猪の事を「牡丹」、鶏のことを「柏」、そして馬のことを「櫻」と呼ぶのはそのためで、「森の木の実を食べるのだ。」という感覚なのでしょう。  櫻の木の鞁筒と「櫻(馬)」の皮で作られた鼓の皮を麻紐で掛け、自然とウマが合ったのでしょうが、「打楽器の中で世界一美しい音色。」とまで評される鼓が生まれたのです。鞁の演奏家は、鞁本来の持つ響きを引き出す役目を持つといえ、全身全霊で打ち込まなくては自然の驚異に打ち負けてしまうのです。

 日本人は櫻の木に対して独特の思い入れが有るようですが、「さ」の言霊は「魂」、「くら」はそれの収まる所。合わせて、「魂のすみか」という言霊を有すとされる櫻は、今なお多くの人の魂を引き寄せるのでしょう。

 戦後の日本が、形だけの欧米化が広がる中で忘れてしまったことと、見失ってしまったことが多くあると思います。  自然と対話し、共生していく姿勢を「木の文化」、いや、「森の文化」からもっともっと知らなくては世界の紛争は無くならないと思います。


大倉源次郎(おおくらげんじろう)
能楽大倉流小鼓方 十六世宗家(大鼓宗家預かり)

1957年、大倉流十五世宗家大倉長十郎の次男として、大阪に生まれる 1965年、「鮎之段」にて初舞台
1970年、初能「岩船」
1981年、甲南大学文学部卒業
1985年、十六世宗家となる
「大阪文化祭奨励賞」「大阪市咲くやこの華賞」ほか受賞 社団法人能楽協会理事 教育特別委員会委員 著作関連委員会委員 日本能楽会会員(重要無形文化財総合指定) 東京大学表象文化非常勤講師 ほか
「華通信WEB」 http://www.hanatudumi.com/

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