丸太製材とアドレナリン
丸太−皮をはいだだけの丸い木材
アドレナリン−気持ちを高揚させる副腎の髄質ホルモン
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矢野健一郎/仏師 |
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木彫用木材で古くから最も多く用いられている材料にヒノキがある。縦引きのノコが開発されていない時代に針葉樹の特性である割裂性を利用して板材に加工する事が容易な為、運搬、規格品作りが簡便なため木材利用増大の一要因になっている。
佛像の用材としては平安時代以後に主なる素材として用いられる。厳密にはアスナロ、サワラ、ネズコ、等のヒノキ科木材も含む。
今日、木彫の材料となるヒノキ材はほとんどが植林されたもので径70センチを越えるものでも江戸時代に植林されたものが多い。
樹木を伐採すると原木と称して市にかけられ、専門の業者(免許制度)により競られ、商品となる仕組みになっている。
私ども一般人が木彫素材と出会うのは原木に接するのが最初となる、皮付きの丸太である。丸太の中身(節の位置や角度)を皮付きの状態で判断することになる。皮を矧いでしまうと購入の決定意思表示となる決まりである。皮付き丸太の状態で木材の個性や節の位置、角度などを見抜く知識の習得には経験がものを云う、どのくらいの大きさの何を造るか、一木で造るのか、何材でどのように寄せて造るのかなど想像力を最大に働かせて考え、丸太材を選ぶ。次に皮を矧いでもらい自分の予測と同じ位置に節があると安堵して製材の位置決めとなる。このときには頭で描いた絵図と共に体中にアドレナリンが駆け巡るのがわかる。
製材された商品を購入するのも一つの選択、原木を買って頭の中で製材位置決めを楽しむのも一つの選択。
平安時代の木彫佛では一木造りでは勿論のこと、割り矧ぎ造りの佛像、初期の寄木造りなどは同一木材から原材料を選んでいることが判っている。同一木材を利用すれば材のねじれや歪が予測可能だからである。
原木買いと製材、一度お試しあれ。
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「檜図屏風」 伝狩野永徳筆 東京国立博物館蔵
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矢野健一郎(やのけんいちろう)
仏師
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1948年、宮崎県に生まれる
1974年、東京教育大学教育学部芸術学科彫塑専攻卒業
1976年、東京藝術大学大学院美術研究科修了(保存修復技術専攻)
現在、矢野造形技法研究所主宰、
仏像制作と京都や奈良を中心に古仏像の調査研究および修復を行うかたわら、
東京藝術大学・奈良古美術研究施設・講師も勤める
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