「2台のテーブル」 |
田渕俊夫/日本画家・東京藝術大学大学院教授(文化財保存学) |
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我が家には全く形態の違った二つのテーブルがあります。1台は装コウ台(※そうこうだい)という表具師が使う作業台で、114、5×270、5センチの大きさがあり、厚さ6センチの柾目の桧板を七枚継ぎ合わせ、釘を一本も使わずに仕上げられています。何しろ繊細な技術を要する日本絵画の表装や修理に使う作業台ですので、継ぎ目の隙や板の反りなど許されず、木工の匠の技の粋を集めて作られています。
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もう1台は94×189センチの大きさで、厚さが5、5センチあり、こちらは装コウ台と違って巨木から取った一枚板です。フィリピン製で堅い南方の材木で作られているので2、3人でやっと移動できる程の重さがあり、水に沈むといわれています。このテーブルは美しく仕上げようなどと全く考えず、木目に逆らわず板にしただけで、おまけにどの過程で付けられたのか、ざっくりとえぐられた荒々しいナタの跡や焼け焦げの跡があります。製作年代は分かりませんが、このテーブルが辿った来し方の歴史をあれこれ思い巡らせる楽しみを与えてくれます。
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フィリピン製テーブル
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この全く性格の違う2台のテーブルの共通点は無垢材ということです。エアコンが普及し、反りや割れがくるからと全て集成材で仕上げられている我が家の中で、エアコンにも四季の温度や湿度の変化にもびくともしないこれらのテーブルの存在は、私にとってものの本質を考えるうえで極めて貴重な存在となっています。
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※装コウ台=
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田渕俊夫(たぶちとしお)
日本画家、東京藝術大学大学院教授(文化財保存学)
1941年 |
東京都に生まれる |
1965年 |
東京藝術大学美術学部日本画科卒業 |
1967年
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東京藝術大学大学院美術研究科修了(日本画専攻) |
1984年 |
愛知県立芸術大学助教授 |
1985年 |
日本美術院同人、東京藝術大学助教授 |
1995年 |
東京藝術大学大学院教授 |
1999年 |
第11回MOA岡田茂吉賞受賞 |
2002年 |
大本山永平寺襖絵奉納 |
現在 |
東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学教授(保存修復日本画)
財団法人日本美術院評議員
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