「無残と言うも愚かなリ」と思わずつぶやいていましたが、庭の梅の木はすでに可憐な花をつけていて、心打たれるものがあり、上記の句が浮かんだ次第です。
この資料館が県と市の援助を受けて再建されたのは、4年後の平成11年3月のことでした。文化財としての指定を継続するために、従前の木材を51%程使用し、また免震構造を施しています。当社では唯ひとつ、灘五郷の中でも数少ない木造蔵となっています。
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震災で廃土と化した資料館
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昔、木造蔵で使われていたのは、道具類も含め、木と竹と紙と土と石でした。これらは、日本の自然から得やすいものであり、日本の造形の基本素材と言えるものでしょう。木造蔵の中にいるとなんとなく落ち着いた気分になる、癒された気分になると言われるのは、この自然素材の由であると思われます。 |
<主な素材の種類>
・建柱;杉または桧
・棟梁;松
・男柱(酒をしぼる支柱);欅
・ハネ棒(酒をしぼる棒柱);欅
・酒槽(さかふね:酒をしぼる箱型の器);桜
・大桶などの桶類;杉
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再建なった沢の鶴資料館
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杉の素材が多いのは、アルコールを生成する酵母菌がすみつきやすいという理由によります。昔は、自然に生育する「蔵つき酵母」の働きが重要でした。灘では「吉野杉」を使っていましたが、酒づくりには適した素材であったのでしょう。
それにしてもいろいろな種類の素材を用途に応じて使いこなしていることに驚きます。
「あしたを今いにしえに学ぶ」
昭和53年資料館開館に際して、奈良東大寺の清水公照管長にご来臨賜り、この言葉を戴きました。資料館には、まことに先人の智恵が豊かに詰まっています。今や当社で唯一残存する木造の酒蔵、沢の鶴資料館を大切に保持しながら、先人の智恵に学びつつ、新しい沢の鶴を造っていきたいと考えています。
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西村隆治(にしむらたかはる)
沢の鶴株式会社代表取締役社長
昭和20年 大阪生まれ。
京都大学法学部卒業。
京都大学法学部大学院修了後、京都大学法学部助手。
昭和49年沢の鶴株式会社入社。
昭和59年沢の鶴株式会社社長就任。
現在、灘五郷酒造組合理事、日本酒造組合理事、近畿支部長
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男柱とハネ棒
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