●籔内佐斗司 |
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展覧会レビュー「拝啓、中村正義さま 籔内佐斗司より」展にあたって
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日本画家・中村正義も彫刻家・籔内佐斗司も「顔」が最大のテーマです。 「顔は精神を含め、肉体全体の縮図なのであろう。故に意思は顔をつくる。・・・人間の顔は精神の象徴と考えられるのである。つまり意識、前意識は人間の可能な能力の限界の中にあり、そこに根深く形成される「顔」とは、無限の創造への素材でもあろう。」と中村正義は「顔の自伝」個展パンフレットの中でこのように言っています。つまり顔は自分自身が気付かないうちに精神構造そのものが顔に表れる。顔はすべてを表現してしまう。 籔内佐斗司先生も「顔」をつくることが最大のテーマです。 また二人の作家の共通する点は、既成概念にとらわれることなく自己表現できる作家です。時代は異なりますがそれぞれの時代で日本文化芸術を見直しどのように創造するか真剣に取り組んでいます。奇才・異端とよばれる作家はいますが、一瞬にして見る側をひきつけ次にどんな作品ができるのか楽しみにさせてくれる作家はそんなにいません。 この二人を結びつける展覧会を行うことが出来ました。籔内佐斗司先生は大きな作家に真っ向から挑みました。日本画と彫刻と違う表現方法ですが、「顔」で埋め尽くされた会場は見事でした。会場そのものが芸術と化していました。何度も足を運んで下さった方や作品の前から動かない方がたくさんいました。私は残念ながら生前の中村正義先生に会ったことがありませんが作品は数多く扱ってきました。日展時代の力 強い樹樹の風景・自らペテン師になると言って一度だけ描いた「太陽と月シリーズ」の綺麗な風景・理解されなくなった赤い蛍光色の花・般若心経をバックにすい込まれる仏画・憎悪をうちに秘めた舞妓・素晴らしい線で描いた水墨画や書・恐ろしいなかにもどこかあたたかい「顔」など、その作品群はどんどん変化していきます。創り上げてはすぐ次の表現方法へと変化していきます。それは速水御舟もそうでしたが、階段を上っては降り上っては降りの繰り返しですが、どれも完全です。籔内佐斗司先生も共通しています。800年前の伝統的な仏像彫刻の技法をもとに独自の彫刻技法を完成し日本の精神世界を独特の造形で表現しています。次々とつくり出すユーモラスで奇想天外な作品は老若男女を問わず魅了します。また、「Art for the Public」として野外や公共空間にブロンズ作品を設置しまちづくりにも力を入れています。 数年後にもう一度お二人の展覧会を企画してみたいと思います。次回はニューヨークとパリでも行ってみたいと考えています。 |
平成13年1月23日 記
かね吉榮画廊 岩瀬吉弘 |
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